2010年12月1~7日
「第6回小川孝郎塾開催」
 
 今年のタイは例年稀に見るほどの大旱魃と大洪水が立て続けに各産地を襲い、我々のホムトンバナナの生産基盤を大きく揺るがす大災難の年となりました。これを受けて現在各産地ではさらなる生産基盤強化へ向ての活動が始まっており、その一環として第6回小川孝郎塾開催の運びとなりました。

~小川孝郎氏について~

 小川さんは山梨県でブドウを30年以上も有機栽培で栽培し続けている農業生産者で、農業改良普及員だった経験もあることから実践的な農業技術の指導者としてホムトンバナナの生産者にこれまで数度に渉って貴重なアドバイスをされて来られた方です。

 今回小川さんには2010年12月1~7日の長期日程で東北、中部、南部の各産地を飛び回っていただき、それぞれの産地が抱えている問題をメインに対策指導を行っていただきました。東北部(ホムトンバナナ地域事業体)は寒波対策、中部(バンラート農業協同組合)は先割れ対策、南部(トゥンカーワット農園経営農民会、チュムポン県無農薬ホムトンバナナ生産組合)は旱魃対策が主なテーマです。

 東北部は前回小川さんが訪問された際の栽培指導がしっかりと実践されており、栽培管理状態は非常に良好との評価をいただきました。寒波対策のポイントは次の2点です。

①カリ成分を多めにした施肥を心がけること。こうすることで葉と幹が肉厚になり、寒さに強くなる。(気温が冷え込む時期、人間ならジャンパーを羽織れば済むことであるが、だからと言ってバナナにジャンパーを着させるわけにもいかないので、かわりに細胞をしっかりと作る手助けをしてやることが大切。)

②この時期は乾燥しているため、常に土壌の湿度を確認しながら潅水を怠らないこと。表土が割れると中の根っこが千切れてしまい、根の栄養吸収能力が低下してしまうため、寒波の時期に多い生育不良が発生しやすくなる。(中には毎週潅水を行っていても表土が乾燥して割れてしまっている圃場もあったことから、この時期の乾燥の強さが伺われる。)

先割れ症状

 これまで原因のはっきりしなかったこの地域に多い先割れ症状は、小川さんの診断により“間違った施肥による生理障害”が主な要因であることがわかりました。対策は次の2点です。

①現在の窒素偏重な施肥をやめる。(窒素肥料をあげると目に見えてバナナが立派に育つため、この肥料ばかりをむやみにあげている生産者が多い。)

②潅水をほどほどにし、土壌が湿る程度の状態(湿度70%程度)を維持する。(現在バンラートでは畝の間にバナナを植えており、潅水時はそこに水を流し入れて溜池状態にしている。この方法だと折角あげた肥料がバナナに効く前に下へ逃げてしまい効率が悪い上に根っこも傷んでしまうため、生理障害を起こす確率も高くなる。ちなみに東北産地はこことは逆で畝の上にバナナを植える方法をとっており、ここでは先割れ症状がまったく見られていない。このことからも潅水過多が先割れ症状発生の大きな要因であることが予測されるが、中部産地では畝の間にバナナを植えるのが常識となっているため、この常識をどのように変えていくかが今後の課題でもある。)

 旱魃対策の基本は保湿効果の高い団粒構造の土作りをしていくことが重要なポイントということで、次の3点がアドバイスされました。

①すでに一部圃場で実施されている幹周りへの被覆をより積極的に行っていく。(バナナの葉や幹、パーム絞り粕、ヤシ殻繊維等を用いる)

②窒素化合物を生産する根粒菌のあるマメ化の植物を積極的に植えていく。

③トゥンカーワット農民会所有のBMプラントを生かし、潅水時にBM生物活性水を一緒に混ぜて使用するようにする。

 

 今回各産地を訪れて確認できたことは、正しい施肥内容と施肥時期を理解している生産者が非常に少ないということです。安定した品質・量のバナナを栽培していく上でこれほど大事なことは無いにもかかわらず、生産者間でこの知識の共有がしっかりとなされていなかったということは我々にとっても大きな反省点でした。今後できるだけ早いうちにホムトンバナナ栽培マニュアルとも言うべき“正しい施肥内容と施肥時期”を記したパンフレットとポスターを作成し、掲示、配布活動を行っていく予定です。

  

 
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